2018.05.17
こんばんは。秋田市議会議員の宇佐見康人です。
国会では北朝鮮問題などそっちのけでモリカケ問題を追求ばかりしているような印象を受けることが多いですが、その間に密かに「男女候補者均等法」なるものが与野党の全会一致で成立しました。
この法律は、女性の声を政治に反映させるために国政選挙、地方議会選挙などで男女の候補者の数ができるかぎり「均等」になることを目指すことを目的とした法律です。また、努力義務に止まり政党が候補者を擁立する際になんら強制力は働きません。
とは言え、来年の統一地方選挙と参議院選挙の際に各党がどれくらい本気で「女性の候補者擁立」をするのかで今後の政治の景色も変わってくるのではないでしょうか。
さて、私はこの男女候補者均等法は問題提起としては一定の意味があるものの、本当に男女が半々の議会を目指すのであれば選挙制度そのものを見直さなければいけないと思っています。
そもそも、現在の公職選挙法では女性が立候補することも投票することも禁止していません。それなのになぜ女性の候補者、政治家が少ないのかを根本的なところから考えていかなければいつまでたっても女性の候補者は少ないままだと思います。強制力のあるクウォーター制を導入すれば話は別ですが。
私は政治の世界に女性が少ない最大の理由というのは「やりたい人が少ないから」だと思っています。これは若い候補者、政治家が少ない理由にも共通するのではないでしょうか。
私も政治家になり分かったことなのですが、政治家には2種類の仕事があります。
まずは、議会や委員会などの議員としての仕事です。こちらが政治家・議員としての本分であり、手を抜くことが許されませんし、日々勉強をし成長していかなければいけません。
そしてもう一つの仕事は議員でいるための仕事です。こちらは日々の挨拶回りや地域活動などであり自分次第で手を抜くことも、議会活動そっちのけでさらに力を入れることもできます。
議会活動をしっかりとしていれば選挙で当選するわけではありませんし、かと言って政治家でいるための活動ばかりしていても政治にとってプラスに働くことはありません。
でも、選挙で当選しなければ政治家としての力を発揮することはできませんので、このバランスというのは非常に重要であり難しいところでもあります。
ちなみに私はまだ1期目の議員ですのどうバランスを取ればいいのか分からないので、いろいろな活動に手を出してしまいだんだんプライベートの時間が無くなってしまうというのが正直なところです。
政治家とは選挙に強くなければ仕事が出来ないのです。裏を返せば、いくら良い政策立案が出来たとしても当選しなければ全く意味をなさなくなってしまうのです。
またもう一点は、これは私のコミュニケーションの問題なのでしょうが結構キツイことを言われても耐え忍ばなければいけないケースもあります。例えば町内の総会に呼んでもらった時に無茶な要求をされたり、居酒屋で知らない先輩から罵詈雑言を浴びたりなどなど。議論を戦わせる環境であればいいのですが、「お前年下なんだから反論すんじゃねーよ?」という環境の時は本当に時間が過ぎるのを待つだけとなります。おそらく、女性議員の場合は(秋田市内では無いと信じています)このようなことにプラスしてセクハラも受けることもあるのではないでしょうか。
土日祝日関係なく朝から夜まで動き回りプライベートはない。政治家にだったら何を言ってもいいと思っている人からの言葉にひたすら耐え忍ぶ。
で、このような現状を生み出している要因は選挙にあると私は考えています。当選後だけではなく、選挙期間中、いや選挙前からいかに選挙のために時間や労働力を費やせるかが勝負の世界です。選挙期間(市議会議員の場合は7日間)の選挙運動だけではなく、その前からの政治活動が鍵となる世界です。
早朝からお決まりの場所に立ち街頭活動、日中は知り合いへ挨拶回り、夜は事務作業。選挙になればこれプラス選挙カーでの連呼運動。日々のいかに人の目に止まるか、どうやって名前を覚えてもらうかが勝負の世界であり、時間的にも肉体的にも精神的にもかなりタフでなければ出来ない「政治」という世界に挑戦するだけで多くのモノを犠牲にしなければいけないのに、今の若い人や女性が挑戦するのは稀です。ましてや小さい子供を育てている人はほとんど無理な状況です。
ですので、この日本の特殊な選挙制度という本丸に切り込まない限り、いくら理念を追い求めても形骸化して終わってしまい、さらに女性や若者の政治家が生まれる可能性が低くなってしまうと私は思います。
一部地域では政治家もなり手が不足しているようですが、現状の選挙制度から政策型の選挙制度に変わっていけば少しは改善していくのかなと思っていますが、これは政治家側が変わったとしてもあまり意味がありません。政治家を選ぶ有権者の意識も変わっていかなければいけません。
それは並大抵の努力では変えていくことは出来ませんが、私たち若い政治家が徐々に変えていければと思っています。
今回の男女候補者均等法の成立を機会にそのような制度的な改善も議論されることを望みますし、今後積極的に議論していきましょう。